| エピソード Ⅴ | 強制執行、開けたら犯人大暴れ！ |
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非常に小さな声で、｛時間です。始めてください。｝と執行官。
いつもの強制執行の現場。
建てられてから間もないピカピカの分譲マンションの最上階である。
なぜか今日は警察官の人数が多い。執行時間の3分くらい前までは、近くの路上で待機させられていて、普通に通りすがりの人かと思いきや小声で｛ご苦労様です｝と声を交わす。
これまた私服警官。まずエントランスに2人、多分マンションの裏口に数人、建物から通りに出るまでに2人・・・・・
いつもに比べそれ以外なんら変わらない執行現場だったが、執行開始から約3分。
[ガチャ]とカギの開く音。鍵開け道具を鍵穴から外したその時。
誰もドアの取っ手を触ってないのに扉が開いた。
「なんじゃコラァ！」（と言ったと思うがさだかではないが）
容疑者らしき人物が棒を片手になんと襲い掛かってきたのである。とっさの事で何がなんだかわけも分からず、一発食らった。と同時に、相手の胸倉あたり？を掴んでいた。と言うよりは、身を守ろうと出した手が相手の体を掴んでいた。そして私が身を崩す方向にそいつを引っ張り、一緒に倒れこんだ。（ちょうど柔道の足払いの格好である。）その後は一瞬である。ほんの数秒間で警察官に締め上げられ御用となった。
ここは最上階である。ベランダからは逃げられない。端部屋だが窓の外は地上数十メートル。執行に気付いた時には既に遅く、最終手段として襲い掛かってきたのだろう。猫に追い詰められた鼠が猫にまでも襲い掛かるあの”最後のあがき”である。
人間じんわり攻められると弱いが、一瞬だと痛くない。（この時は後からずいぶん痛かったが・・・）
容疑者としてみれば何か殺気立つものを感じ出してから鍵が開けられるまでのほんの数分間だが、かなりじんわりと苦痛だったであろう。「つかまってしまう！どっどないしょう」と
それにくらべれば、こちらは一瞬の出来事で何も意図して行っていない行動に褒められたんだから（その半分以上は謝罪の意が込められていたが）よしとしよう。 もし１０メートルくらい先から棒をもって襲ってきたとしたら、殆どの人が逃げるか同様の棒、若しくはそれ以上のものを手に握り応戦するだろうが、そんな間もなく襲ってきら・・・・・そんな緊張感と一発食らった痛みをじんわり感じながら、次の現場へと向かうのでした。
おわり
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